備忘録

需要0です。役に立ちません。書ける程、進捗ガンバリマス!

安部公房『砂の女』(新潮文庫)

風邪で散々な休日でした。

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なんと言うか、まあ凄い話だ。話自体も凄く良く出来ていて感心するばかりだが、描写も独特で面白い。特に畳み掛ける比喩表現が印象的だった。日常からかけ離れた、想像し難い設定だったのに、終盤では最早違和感はなく、ひとえに安部公房の写実的なそれがよほど凄いんだろう(そうらしい、解説曰く。言われてみるとそんな気がする。

ラストはまあ予想通りだったけど、結局僕らが生きている現実も似たようなものではないか?って言う問題提起も含意されているのだろうか。始めのうちは、砂の世界に生きる女性に違和感を覚えた、と言うか、なぜそんな悪環境で平然と無抵抗に暮らしているのか理解に苦しんだが、最後まで読んだ時、すっと腑に落ちた。順応しちゃったのだ、学習性無力感に近いものだろうか。僕としては我々の生活もそうでは?って言う強いメッセージを垣間見た気がした。事実、途中の主人公の回想シーンで、そんな雰囲気があったように思うし。ちょっと怖くもあるが。まったく、なんとも言えない読後感だ。

あと、どころどころ主人公や女の行動や感情がよく分からなかった。なぜそこで笑うんだ?って結構な回数思った。国語力なんですかねぇ。特に、最後女が病院に運ばれる際に抱いていた感情は慣れない外へ連れ出される、自分のテリトリーから離れる故の恐怖感なのだろうか、大きなところだとそこの感情が僕にはやっぱり分からなかった。

兎角面白かった、印象深かった事は間違いなく、描写や独特の比喩も素敵だったので、また安倍公房の違う作品も読んでみたいと思う。

 

追記、男の高慢さ、若干の間抜けさが読んでて少し苦痛だった。