備忘録

需要0です。役に立ちません。書ける程、進捗ガンバリマス!

井手英策『幸福の増税論』(岩波新書)

お久し振りです、志希です。

実は3月前半には読み終わっていたのですが、公開するような内容の感想を書く事の障壁が高くて、しかも増税というセンシティブ内容で、バタバタしていた事もあり、遅くなりました。

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基本的に私は、いつか我が国の財政は破綻するんじゃないかという話をちょっと信じているタチなのですが、それはさておき、財政について考える際、いつも破綻をどのように回避するのか、という観点から考えるようになっていました。丁度去年の今頃、ずっとそんなことを調べていたので、財政について考える際は破綻するか否か、どうやって健全化するかという話で思考がいっぱいになっていました。

本書を読んで、真っ先に感じたことは、税金をどの様な目的で使っていくか、そこにもっと夢を持っていいんだろう、ちょっとの健全化を考えるより、どういう税金や社会保障を持つ国にしていくか、そこをもっと考えるべきなんだろうということです。簡単に書いていますが、内容のほぼ全てを健全化のための税調達の話や国債の大半は日本が保有しているので実は大丈夫なんだとかで埋まっている本を眺めてきた自分にとっては右からパンチの衝撃でした。(善し悪しではなく、そういう発想もあるんだと驚きました。)

冒頭に記される「勤労と倹約を美徳とする文化」、「自己責任論」の話はありがちですけれど、非常によく纏まっていて、分かり易かったです。そして、一昔前と異なり、現代ではもう自助努力だけでは回っていかず、格差は広がるわ、経済力は下がるわで、挙句債務は膨大に積み上がるわで、どうすんだっていう現状に対して、筆者の提示する「ベーシック・サービス」を中心とする社会では、税金が貯蓄となり、生の保障された、将来不安が少ない社会になるという主張が淡々と続きます。(確かそんな感じでしたよね??)

筆者の考える社会は素晴らしいと思いますし、要は今の北欧型の社会制度に近付けましょうという話で、枝葉の部分でやや怪しい箇所はありますが、成立し得ない事もないでしょうし、今よりも夢が有りそうな素晴らしい考えだと私は感じました。ただ、その社会が存在出来る事と、今から日本がその社会に変わる事が出来るかは別だと私個人は思うので、正直世論を見る限り実現が難しいのかなと考えました。

ただやはり着眼点と発想は素晴らしいと思います。特に後半で紹介があった、その国の経済成長率の底力を示す指標?(どんなにやってもこれ以上は上がらないだろうと短期の成長率を見積もる値)のところは明快で、全てが上手くいったとしても昔程、自己責任で生きていける社会ほどの成長は見込めないのだし、成長という幻想から脱却しましょうという所は本当に痛快で、良いと感じました。

今日、もう昨日ですが、5月から元号が令和になる事が発表されましたが、令和の時代が今より希望のある、将来不安の少ない社会になることを祈ります。